護摩はインドから伝わる言葉で、古来、インドでは釜の中で火を焚いて、燃える炎の中に穀物や珍味を投げ入れて焼き、供物を煙として天の神々に届けることにより、 功徳が得られると教えられてきました。この供物を煙として捧げるという作法を取り入れたのが密教の修法である護摩行の始まりです。

真言密教の護摩は、密教の中心仏である大日如来の化身とされ、 衆生を救うべく使命を受けてこの世に派遣された不動明王を御本尊としています。その前には御本尊を迎える聖地として護摩壇が設けられており、結界が張られています。 

護摩行が始まると、 護摩壇の中央に置かれた釜で薪が焚かれ火が入ります。 護摩導師を勤める当山の住職によって 不動明王を迎える作法と共に真言が唱えられると、 護摩壇の炎の中に不動明王が降臨されます。 そこで感謝の意を込めて、いろいろな供物を捧げ、経を唱えて一心に祈リます。

護摩祈願勤修の目的は世界平和、 国家安泰、五穀豊穣などを祈願することにありますが、 同時に個人の願いである家内安全、厄除開運、交通安全、商売繁盛、無病息災、方位厄除、大願成就なども護摩札に祈願し加持します。 護摩の火は、智火ともいい、不動明王の智慧を象徴し、 薪は煩悩を表しています。 つまり護摩行を通じて薪という煩悩を不動明王の智慧の炎で焼き尽くし、その願いが清浄な願いとして不動明王に受け止められ成就することを祈る・・・・これが真言密教の大切な修法である護摩祈願です。